声優はお仕事の際、いろんなことを台本に書き込んでいます。
内容は人それぞれで、台本が真っ黒になるほど書き込みをしている声優さんもいれば、ほとんど台本に書き込みをされない声優さんもいらっしゃいます。
声優さんは収録にあたってどんなことを台本に書き込んでいるのでしょうか。
タイム
アニメ・吹き替えの仕事の場合は仕事が決定すると、前もって練習用に台本とリハVと言われる動画素材をもらうことができます。
リハVにはTCR(タイムコードリーダー)といって「この作品の何時間何分何秒のところが今流れているところですよー」というのがわかるものが表示されています。
なのでこのリハVのTCRを見ながら自分の役がどのタイミングで喋り出すのか、というのをチェックしていくんですね。
これは大体の声優さんが自分の台本に書き込んでいます。
逆にゲームやパチンコの収録など、あらかじめ資料になるVTRがないものに関してはタイムがないのでこういったことは台本にも書き込んでいません。
アドリブ
台本には
- ト書き
- セリフ
この二つのことが書かれています。
セリフはそのままセリフのことですがト書きというのは画を説明する文章です。
例えば「ゆめははため息をつきながら席を立ち去っていく」みたいな文章が書かれているのがト書きの部分です。
こういうト書きがある場合は、セリフには特に何も書かれていませんが、ト書きから判断してため息のアドリブを入れます。
こんな感じで台本に書いてあるセリフだけが、演じなくてはいかないセリフなのではないんですね。
台本を読みつつ、リハVも見つつ、いろんなヒントを拾ってアドリブを入れていくのも声優の仕事のうちです。
こういうアドリブ系は入れ忘れてはいけないのでト書きに印をつけたり、セリフのところに書き足したりします。
ガヤ
ガヤ、というのもアドリブ扱いのようなものなんですが
これは役名がついていないだろうけどそこにいるであろう人たちを想定して入れるセリフですね。
ショッピングモールのシーンだとしたら、メインのキャラクター以外にもそこに遊びに来ている人たちが他にいるはずです。
そういう人たちの話し声をみんなで一斉に録っておくのがガヤと呼ばれるものです。
しかしガヤは台本に「<ガヤ>」みたいな感じでしか書かれていないのでセリフとして喋る内容は台本を見てもわかりません。
だからショッピングモールのガヤ収録だったりしたら想定されるセリフを台本にあらかじめ書いておいたりする声優さんもいます。
- 「この服可愛くない?買っちゃおーかな〜」
- 「いらっしゃいませー」
みたいなことですね。
ガヤがなんなくできるようになるまではある程度経験が必要です。
ベテランの声優さんはわざわざ台本に書き込みをしなくてもアドリブをこなしていらっしゃいますが
新人のうちはアドリブで話すことをあらかじめ考えておいて台本に書き込んでおいた方が心配がないですね。
私もデビューしたばかりのころはたくさん台本にアドリブ書き込んでいました。
ディレクション
アフレコが始まってからはその場で監督から出たディレクションを台本に書き込んでいきます。
- どういう風なニュアンスでセリフを言うのか
- イントネーション
などなどのことも書き込みます。
それ以外にも別録りと言って、本番では一緒に録音しないセリフやアドリブなども台本にチェックをいれて書き込んでおきます。
キャラプロフィール
声優さんによっては自分のキャラのプロフィールを掘り下げてたくさん台本に書き込んでいる方もいます。
アフレコ時はどうしてもキャラの基本情報しか伝えられていないので、原作があれば原作を読んだりしてキャラクターのことをとても勉強しています。
想像力をフル活用して、自分が演じるキャラクターは何が好きで何が嫌いか、ということから
家族構成はどんな感じなのか、そのキャラクターの人格を作っていく上で重要な物語を自分の中で構築していくのです。
そういったことを台本にびっしりと書き込んでいくんですね。
中にはイラストを描いたりしている方もいらっしゃいます。
オフゼリフと言って、画面に口元や顔が映っていないけれどセリフがある、みたいな時はイラストを描いている人も多いです。
台本のそれぞれ
声優さんによって、台本にどれくらい書き込みをしているのか、というのは本当に差がでます。
台本がアフレコにくるころにはベロベロになってしまっているくらい書き込んでいる方もいらっしゃいますし
逆に台本がもらったばかりの時のように美しい声優さんもいらっしゃいます。
どちらがいい、というのでなく、どちらがその人にとってやりやすいのか、とういことなんです。
だから人の台本を見ると結構わかりにくいこともあります。
時間のない中で台本への書き込みをしているので字も雑になってしまいますし、印も自分だけにわかるような印がつけてあったり、
結構みなさんそれぞれオリジナリティーがあるのです。
今回は声優さんの台本について話してみました。
読んでくれてありがとうございました。
では。