質問箱にて以下のような質問をいただいておりました!
声優は幅広い年齢の役を演じることができた方が、現場に出られるチャンスも広がって良いですよね。
なので子供や老け芝居の練習をされることも多いと思います。
今回はこの子供とか老人など、自分から年齢が少し離れた役を演じる時、私がどのようなことを意識しているか、ということをお話ししてみたいと思います〜!
もくじ
「声を作る」よりも「身体の構造をイメージする」
子供や老人などの役をやる時に、「声を作る」という感覚でいる方って多いと思うんですけど、
そもそもこの感覚でいることが「声をキープすること」を難しくしているんじゃないかと思うんですよね〜!
昔海外の吹き替えアニメのアフレコ現場で幼い男の子の役をやった時に、なかなか上手くできなくてリテイクが多くて、
音響監督さんに
子供はそんなに肺活量無いんで、そこらへん考えてー
とディレクションしていただいたことがありました。
今考えると未熟すぎて恥ずかしいけど、「たしかに…!」ってなっちゃったんですよね。
(現場で「たしかに…!」って思ってるようじゃアカンのだけども…)
それから子供の喋り方を狂ったように研究するようになりました。
肺活量が少ないから、喋りながら変なところでブレスが入ったりするし、赤ちゃんが泣く時は肺の中の空気を全部押し出すように泣いてて、甲高い声で一定な音が多い。
そういうことを考えるようになってからは「どういう声か」ということを意識して声を作るのではなく、
「どういう身体構造か」を意識するようになりました。
身体の構造が細部まで意識できていると、自然と声は「作る」というより「出る」という感覚になって、キープしやすくなったんですよね。
例えば老けだったら、背中や腰が曲がっていたり、口周りの筋肉が少し衰えていてモゴモゴしていたり、喋る時に口が開ききらない。
そういう身体構造的な情報が声に乗ることによって、老けの芝居に聞こえてくるんじゃないかと。
身体構造を考えれば、音の高低以外の演じ分けが可能になる
こんな感じで、身体構造から考えてお芝居をすることによって、音の高低ではない演じ分けもできるようになります。
子供の役をやってください、というとみんな決まって甲高い声を出そうとするんだけど、実際子供の観察をしていると、みんながみんな声が高い訳じゃないんですよね。
おばあちゃんやおじいちゃんだってみんな声が低いわけではなく、声が高めのおばあちゃんやおじいちゃんも居ます。
自分の周りの人をぜひ思い浮かべてみてください。
友達でも、年齢結構上なのに声高い人いるんだよなぁ
「声を作る」というアプローチをすると、どうしても若い=声が高い・老け=声が低い、というイメージになってしまいがちで、声のトーンによって演じ分けしようとしてしまうけど、
身体構造イメージからアプローチすると、声のトーン以外での年齢の演じ分けができるようになるんじゃないかな〜と思ってます。
身体構造イメージからの演じ分けは年齢以外にも応用できる
ここまでは年齢の演じ分けについて主に話してきたんですけど、
この身体構造イメージにアプローチを変えると、年齢以外にも演じ分けできる幅が広がると思っています。
例えば身体が細いか太いか。
身体が太くなることで、声も太くなり、がっしりした音になりますよね。
これは音の響きが変わるからです。首の周りや口の中にもお肉は付くので笑
声がより肉に振動して重たい音になっていきます。
逆に身体が細いと、響きが軽くなる。響くところが少なくなって、音も軽くなっていきます。
このイメージをするだけでだいぶ自分が出す声の音色も変わるはず。
他にも
- 姿勢の良し悪し
- 身長
- 筋肉のつき方
など意識してみることで、結構声の色を変えることができます。
ちなみに声帯の長さは女性の方が短く、男性の方が長いので、女性より男性の方が基本的に低い声が出るんですが、ある程度声帯の長さは身長にも比例するそうです。
身長が低ければ声帯が短くなるので声音が高くなる傾向が強く、
逆に身長が高ければ声帯が長くなるので声音が低くなる傾向にあります。
とはいえ、私はチビだけど中低音が得意なので、そういう傾向があるってだけで絶対ではないよ!
自分の友達を思い浮かべるだけでも、
- 身長の低い人高い人
- ちょっと身体が太めの人、逆にめっちゃ細い人
- 姿勢の良い人悪い人
- 表情が豊かな人、結構能面な人
とか色々な人がいると思うんだけど、そういう人がどういう声が出ているか、というのも研究してみてください〜!
身近な人もデータをとる対象になるのでね笑
そういう身体構造に着目して声のことを考えてみるのは結構楽しいです。
こういうことを日常的にやっていると、人の声を聴いただけで「あ、この人こういう体格っぽいな?」ってわかったりとか、
ボイトレ(教える側)で言うと「口の開き方・舌の使い方にこういう問題がありそうだな?」みたいなことがわかるようになります。
声って本当に色々な情報が乗ってて面白いんですよね〜
その人の声を聴くだけで体調の良し悪しがわかったり、気分の上下がわかったりもするよ〜!
身体構造的アプローチの理解を深めるために
私が講師として教えさせていただくところでは毎度毎度めっちゃおすすめしてる本があります。
なかなか専門的な本で、オペラ歌手の方や声楽系の方向けに作られている本なんですが、声優、ナレーターの方にもものすごく参考になる本だと思います。
発声というところを軸にして身体構造を解説している本で、
今まで身体構造を学ぶための本はいくつも読んできたんだけど、「発声」に特化して説明しているものがなかなかなくて!
この本に出会った時はマジで感動しましたね。
今日お話ししたような身体的なアプローチを考える時にすごく役立つと思います。
やっぱ身体の中って見えないからさ!教える時も抽象的な伝え方になってしまいがちなんだよね。
でもイメージがしっかりできて、身体の中のどこの部分を動かして声を作っているのか、ということが分かれば、声を出す時にどこに集中すれば良いのか、ということがなんとなくわかってきます。
だから身体構造を学んでアプローチしていくことはめちゃくちゃ重要だと思っています。
もちろん色々ある手段、方法の中の一つでしかないので、相性はあると思うんですが、私はなんとなくやって何故か出来ちゃう、みたいな天才型ではないので笑
こういう論理的なアプローチの方が理解しやすいし、実践にも取り入れやすいと個人的に思っています。
良かったらぜひ読んでみてください〜!
読んでくれてありがとうございました!
ではっ
やっほい!声優ブロガーの幸田夢波です!