先日ネット上で、もう首を縦に振りまくっちゃう記事を見つけました。
>キャラの声の権利が声優さんにあるわけないじゃん?
首を縦に振り過ぎた、、
声優ってとんでもなく膨大な時間をかけて沢山の人が作り上げて下さったキャラクターに最後声乗せる、っていうお仕事なのですよね、、— 幸田夢波@声優ブロガー (@dreaming_wave) May 22, 2021
2021年5月20日放送のTBSラジオ『ハライチのターン!』で放送された内容を書き起こしている記事です。
って話でした。
テレビ業界は声優業界と同じく芸能界、と言えるかもしれないけど、でもやっぱり作り方とかは全然違うわけで、私もテレビ制作のことはあまり詳しくありません。
そういうところをきちんと理解してリスペクトを持って考えていらっしゃるハライチの岩井さん、さすがだなぁと思いました。ゴッドタンのマジ歌だいすきです。
この記事の趣旨とは少しずれるかもしれませんが、内容を読んで思い出したことがありました。
昔アニメの現場でお世話になった音響監督さんに
「声優ってものすごく時間かけてここまで作り上げられたキャラに数時間でアフレコして声のっけて、なのにエンディングで一番最初に名前載るんだよね。そういう責任、感じないとだよね」ってお話ししてもらった時のことを思い出しました。— 幸田夢波@声優ブロガー (@dreaming_wave) May 22, 2021
こちらのツイートは同業の方にもすごく色々反応してもらえたものでした。みんなこういう覚悟を持って仕事に臨んでいます。
実はアニメ制作において、声優って本当に最後の最後にちょっとだけ声を当てる仕事、なんですよね。
アニメ1話の収録は2〜3時間くらい
実は30分アニメ1話の収録時間って2〜3時間くらいなんです。
人気声優さんはこれを1日に何本も、みたいなスケジュールで動いています。
基本的にアニメのアフレコは朝10(あさじゅう)と呼ばれる朝の時間帯のアフレコと、16時〜の夕方のアフレコが定型。
でも忙しすぎる声優さんだと1日に5本以上入ってたりすることもあって、朝の現場で自分の出番のところだけ別で先に録ってもらっちゃって、早退して次の現場(こちらはこちらで別のアニメで朝10からアフレコしてるから遅刻して行く感じ)に行って…みたいな。
なので人気声優さんだと香盤表(どの役をどの声優さんがやるか、というのが一覧になっているもの。事務所名も書いてある)に「早出し(早退)」とか「駆け付け(遅刻)」みたいなことが書いてあります。
私も1日に複数本アフレコ行かせてもらったことが何度かありますが、仕事で仕事に遅れるっていう致し方ない状況でも、やっぱり遅刻していくのとかってドキドキします笑
いやぁありがたい話ですな。
コロナ禍で収録はさらに短くなっている
ちなみにコロナ禍での収録はさらに収録時間が短くなっています。
コロナ前はどんなにセリフが少なくても、出演者全員が10時に集まって2〜3時間一緒に録って全部終わったら解散、って感じだったんですが、
スタジオってやっぱり防音しなきゃいけないので厚い扉で覆われていますし、換気もしにくい場所で密なんですよね。
なのでコロナ禍では、制作スタッフさんが2〜3人くらいのチームに分けてくれて、それぞれが30分〜1時間程度で収録が終わるように組んでくださっています。
チームとチームの入れ替えの時に換気。
もちろんスタジオ着いたら検温・消毒は必須。必ずアフレコの度に体温報告があります。
声優には還暦なんて概念はありませんので、当然ご高齢の声優さんもいらっしゃいます。そういう方は大体別録り。完全にお一人で録る感じが多いです。
この仕組みだとセリフ量に応じて収録時間も変わるようになっていて、私もこの前の収録は15分程度で終わってしまいました。。
もちろん待合室でおしゃべり…とかもなかなかできません。
コロナ前は出番以外の時に他の声優さんとおしゃべりして情報交換したりするのが楽しかったんですけどね。。意外とそういう時間に仕入れる情報がものすごく役立つことがあったりしてた。
作品打ち上げに行くとわかる関わる人の多さ
コロナ前はアニメ作品の放送が無事終了すると作品の打ち上げがありました。
なんとホテルのなんとかの間みたいなところでやったりとか、結婚式場みたいなところを貸し切ったりして、300人とかの規模なんですよ。
でも一つの作品に関わっている声優って20人〜30人くらいとか。もう少しいる時もありますけど、それでも御長寿アニメとかじゃない限りは50人とかまではいかないことがほとんどです。
もちろん制作スタッフさんはそのアニメだけに携わっているわけではなく、今まさに架橋!っていうアニメに携わっている方もいらっしゃるでしょうから、関わってくださっている全員が打ち上げに参加できるわけではありません。
この前は声優業界とは全く別ジャンルの美容方面で知り合った方が「アニメとかゲームの背景描いてます〜」っておっしゃってて、
名刺をお渡ししたら「〇〇(アニメ作品)出られてたんですね!私背景描いてました!外注だったので名前はクレジットされなかったんですけど、、」って言ってくれました。
そういう方もたくさんいらっしゃると思います。全然違う業界でばったり会うくらいなんだもの。
名前がクレジットされていないスタッフさんたちもたくさんいる。
たくさんの人が作品を作るために血の滲む努力をしていて、やっと出来上がったキャラクターに声をあてるのが声優の仕事なんですよね。
本来は声優も裏方のお仕事だと思うんですが、最近は結構表側の仕事みたいになってきているので、なんだか違和感を感じることが多い気がします笑
そういう違和感の部分が、冒頭で紹介した記事のような問題に繋がったりするのかなとも思います。
キャラの声を担当していても
声優に権利があるわけではない
ハライチ岩井さんもお話してくださっていましたが、一人のキャラクターを作るのにもたくさんの人が関わっています。
原作ものであれば原作者先生もいらっしゃるし、そのキャラクターのキャラデザをしてくださった方、キャラを動かすために絵を描いてくださっているアニメーターさん、背景だって必要だし…
さらに声も当てればいいってもんじゃないので、音響監督さんやミキサーさんもいる。
でもキャラクターの声はその声優が担当しているから、テレビに出ると「このキャラの声やって!」みたいなことになるんだと思います。
テレビでそれをやるならそのキャラクターの絵も必要になるだろうけど、出版社さんとかもろもろ確認取らないといけなくなるはず。アニメ映像だと制作会社とか局とかにも許可要るのかなぁ?ここは詳しくなくてごめんなさいですが。
正直アニメに関わってる人じゃないとそこまで想像できないですよね笑
私も「声優やってます!」って言うと大体「なんかの声やって!」とか「いい声でなんか言ってみて!」とかすぐ言われるもんなぁ〜〜笑
声優業界に関わりがない方、アニメ制作などに直接関わっていない方は仕方がない部分だと思います。
でも逆に声優は!これは意識しなくてはいけないことだと思います。
1クールもののアニメを作るのには2億〜3億のお金がかかると言われているし、関わってくれる人の多くの想いを背負って最後に声をあてるのが声優の仕事。
確かに今やものすごく目立つ仕事ではあるけど、こういう意識を持って、魂こめてお仕事していきたいなって思います。
ただ声優も関わる時間が短いから楽なお仕事ってわけでもありません。そこは卑下するつもりはなくて、収録以外でも毎日一生懸命練習して体作りして、Vや台本のチェックもして読み込んで読み込んで、集大成としてアフレコに臨んでるわけですからね!アフレコ以外でも努力はたくさんしております。
今後も覚悟と自信を持って、お仕事がんばりますぞい!
読んでくれてありがとうございました!
ではっ
テレビ番組の制作と違ってアニメはたくさんの人が関わって一人のキャラクターを作ってるんだから、キャラの権利が声優さんだけにあるわけじゃない。
だから「この声優さん呼んで、このキャラの声やってください!」っていうのは難しいんだよ、テレビ番組制作スタッフはそういうこと理解して声優さんを起用しなきゃだめだよ