マイクワーク、という言葉を知っていますでしょうか?
最近では声優の収録現場がテレビで紹介されたりしていることもよくあるので
スタジオの様子を見たことがある、という人もいるかもしれません。
声優の仕事といえばマイク前でお芝居をして、キャラクターに声を当てるお仕事、という風に認識されている方が多いと思います。
しかし、声を当てるにはこのマイクワークというものをマスターしないと仕事ができません。
このマイクワークというものがかなり複雑で、結構新人のうちは苦労するものです。
今回は声優のマイクワークというものがどんなものなのか、ということについてお話してみたいと思います。
マイクワークとは
アニメや吹き替えの収録現場は収録スタジオに20人〜30人くらいがいっぺんに入ってみんなで収録をします。(最近はコロナの影響もあって、みんなが一気に集まって収録、と言う形態は少なくなっています。今後どうなるんだろう…)
アニメや吹き替え作品ではキャラクターとキャラクターどうしが会話し、やりとりする必要性があるので同時に喋っているのを録音するんですね。
同時に喋っているところとか、セリフがかぶっているところとかが作品を見ていてもよくありますよね。
あれは別々で収録をするとなかなか芝居が繋がらなくてうまくいかないものなのです。
お芝居をする方はわかると思うけど、相手がいるのといないのとでは自分のお芝居も全然変わるし、相手の出してくるものに対して呼吸を合わせて自分もお芝居をしていくのが演じ手としての醍醐味でもありますよね。
なので収録スタジオにはマイクが3〜4本ほど立っており、
その周りを少し距離をあけて、椅子もしくはソファーでぐるっと囲んであるような作りになっています。
自分の担当しているキャラクターが喋っている時はマイク前に移動してお芝居をし、
自分の担当しているキャラクターが喋っていない時はソファーや椅子に座って待機している、という感じです。
キャラクターがたくさん出てくるシーンなんかは本当にてんやわんやでめちゃくちゃ大変なんです。
実は芝居に100パーセント集中できるわけでもない、というのが声優のお仕事。
芝居以外にもマイクワークのことも考えなくてはいけないんですね。
もちろんマイクに入ることができたらそこからは思う存分お芝居して良いんですけどね!
基本的に収録は「テスト」と「本番」とで2回やります。
テストと本番では原則同じマイクに入らなくてはいけません。
マイクワークが厳しそうなところだけ別録りにするなどの配慮をスタッフさんがしてくださいます。(もしくは役者側で「ここ入れなかったんでこのマイクに入ります」と申告します)
なのでテストの時に自分がどのセリフでどのマイクに入ったのか、ということを台本にメモっておくんですね。
そうすると本番は割とスムーズにマイクワークが流れていきます。
マイクは同じものが3、4本横並びになっているだけなので
それぞれのマイクに「1、2、3、4」と自分の中で番号をふっておいて、それを台本に書き込むことが多いです。
このマイクワークに関しては実際に声優のお仕事をしている人か声優の勉強をしている人じゃないと知らないことかと思います。
実は芝居と並行して結構器用なことをしているんですよ笑
マイクに乗りやすい声乗りにくい声
マイクに乗りやすい声と乗りにくい声というものがあります。
これは声質や声に倍音(基本となる周波数に対して2倍、3倍…といった整倍数の周波数で出ている音。倍音が一緒に出ている声は一般的に心地良い声とされます。)がどれだけあるか、ということで変わってくるみたいなんですが、
収録スタジオで生の声で聞いているとすごく大きくて聞きやすい声なのに、放送で聞くとなんだかニュアンスが違ったり、
逆に声がそんなに通って聞こえないのに放送で聞くと声がものすごくクリアだったり、とかなり違いが出てきます。
もちろん今は音の編集技術がとても進んでいて、小さな音も拾って調整することができるし、ノイズとかも簡単に消すことができます。(私も宅録で納品する時は編集ソフトにめちゃくちゃ助けられてます笑)
でもやっぱりマイクに乗りやすい声の方が好かれるので笑
自分でも録音機材を持っておいて、マイクで録音した時に自分の声がどう聞こえるのか、どう喋ったらノイズが少なくなるのか、マイクに拾ってもらいやすくなるのか、ということを日々勉強するしかないのだと思います。
人によって変わってくるマイクワーク
マイクワークには個人差もものすごくあります。
一つが身長。
これは私もすごく苦労します笑
スタジオに立っているマイクはそれぞれが微妙に高さが違ったりして、
背の高いマイクに入ってしまうと背の低い人は音を録ってもらいにくくなってしまうので、なるべく自分の背丈に合ったマイクに入らなきゃいけない、とか。
特に男性が多い現場に女性が行く時なんかは高めのヒールを履いて行って調整したり、
収録専用に厚底の靴を持ってきている声優さんもいます。
あとはマイクと口との距離もその人の音圧によって変わってくると思うので、みんながみんな同じマイクとの距離感、というわけではないんですね。
セリフによってもマイクとの距離を変えたりすることもあります。
大きい声を出すのにマイクと近すぎると音が割れてしまったり吹いてしまったり(ぼーってなる)するんですよね。
こういったところはミキサーさんとおしゃべりできそうな機会を作って聞いてみるといいかもしれません。
どちらにせよ大は小を兼ねるので、しっかり土台作りをして声を出せるように練習しておいた方が良いと思います。とりあえず大きな声が出せれば小さな声も出る!
冷静な自分が必要
今回は声優のマイクワークについてお話してみました。
お芝居をするにはとてもエネルギーを使います。
全身全霊でお芝居をしています。
でもそれに集中しすぎてしまうとマイクワークができなくなってしまうし、それで他のキャストさんへ迷惑をかけることもあります。
だからお芝居に熱中できる自分とは別に、冷静な目をもった自分も多分必要なんじゃないかな、と思うんです。
舞台とかでもよくあることですが、生ものは特に、何が起こるかわかりませんから、
そこで役を出ずにうまく処理できるようにならなくてはいけないんです。
現場に慣れていない新人のうちは、マイクワークをうまくこなしながらお芝居も全力でやるために、
- テストでしっかりと自分が入ったマイクをメモしておく
- 家での台本チェックの時に、どのタイミングでマイクに入るか、ということをあらかじめ決めておく
などがおすすめです。
読んでくれてありがとうございました!
ではっ
151センチしかないんだ…