声優は声で表現をするのが仕事なのでアクセントには日頃からとても気をつかっています。
日本語には同音異義語があって、アクセントによって意味が変わってくる言葉ってたくさんありますよね。
- 雨
- 飴
だとか
- 橋
- 箸
といったような言葉です。
これは音の高低によってどちらの意味を指しているのか、区別している言葉です。
声の仕事に携わらない方なら文脈でも判断することができるのでそこまで気をつける必要はありませんが、声優の場合はそうはいきません。
ナレーションとかだと特に厳しくチェックしていかないとですよね…!
しかしこういった発音は、自分が育った地域や、家族の出身にも影響を受けるもので、
自分が正しいと思っている発音でも、実は実際の正しいアクセントとは違う、ということが多々あります。
ちなみに私も東京生まれ東京育ちなのに、親がゴリゴリの九州弁なのでたまに「訛ってるよ」と指摘を受けます笑
これが自分一人で気づくことができないのが厄介ですよね。
プロの声優はどのようにして正しいアクセントを学んでいるのか、ということについてお話ししてみたいと思います。
もくじ
アクセントの辞典がある
日本語アクセント辞典、という辞典があって、
プロの声優やナレーターはこのアクセント辞典でアクセントの勉強をしています。
といっても辞典なので、台本で気になったアクセントとかを調べて勉強する、という形ですね。
最初から最後まで全部読んだりはしてないです笑
アクセント辞典には種類があって、新明解日本語アクセント辞典というものもあります。
NHKから出ているアクセント辞典は「今一番放送業界で支持されている共通語のアクセント」を重要視していて、
新明解の方は「標準的な東京のアクセント」を重要視しているようです。
決定的にな違いは新明解の方にはCDがついてくる!ということ。
実際に耳で聞けるのはいいですよね。
ナレーションやラジオなどの「情報」を伝える仕事をしている方はNHKのアクセント辞典を使っている方が多いと思います。
実はこの二つの辞典でも結構アクセントが異なっていたりして、最終的には現場判断になるので、「これが正解」というのを先に勉強しておくことはできないんですね。
え
とはいえ、正解がわからないから勉強しない、ではなく、正解がないからこそどちらも知っておいた方がいい、という感じです。
現場でアクセント辞典を制作の方が確認したりすることもあります。
辞典を引いてもアクセントが載っていない場合は、「<アクセントがわからない単語> NHKニュース」という感じで動画検索すると、その単語をNHKアナウンサーさんが喋っている動画を発掘できるので、それでアクセントを確認したりしています。
基本はNHKに合わせる。
ちなみに専門用語すぎる言葉は調べても全然出てこないこともあって、この前は論文発表のアーカイブ動画とか見たよ笑
大変だけど、普段関わりのない業界にこうして間接的に触れられるのも面白いなぁと思う!
アプリもある
アクセント辞典のアプリもあります。
NHKアクセント辞典のアプリ!!!!!
実はこれ待望のアプリ化で、
数年前までアプリなかったんですよ〜〜〜!(昔のバージョンのはあったけど、新バージョンのはずっとリリースされてなくて困ってた)
っていうか販売前に、こっそり問い合わせをしてたんですよ笑
担当の方に「今開発中です」って言われてました。
本当に出た!!!!待ってたよ!!!!笑
こちらの辞書アプリをDLして、この辞書アプリ内で検索して購入することができます。(アプリ内で他にも色んな辞書を買えるYO)
こんな感じでアプリ内課金で辞書を買えるようになっています。国語辞典とか欲しい人は他にも買ってみてもいいかも。
アクセントを調べたい言葉を検索すると、こんな感じでアクセント出てきます。
アクセント記号はできれば読めるようにしておいた方がいいですが、アプリなので言葉の横についてる再生ボタンを押せば音声再生してくれますヤッタネ!
基本上に出てくるのが第一アクセントと言って、公式のほう?よく使われるほう?みたいなイメージ笑
二番目に書いてあるやつも間違いではありません。そっちでもいいよ、ってやつ。
ちなみに「1人」「2人」みたいに数字が変わることでアクセントや読み方が変化する言葉(助数詞)も細かく載っています。
これを知ってれば何かを数える時も正しいアクセントで数えられる!
特にナレーションのお仕事する場合は結構数字が出てくることは多いから便利!
現場に持っていくのはさすがに重いですが、紙辞書は家に一つ持っておいてもいいかもしれません。
アプリは能動的に言葉を検索しないといけないけど、紙媒体だとパラパラとめくることができるので、暇つぶしにアクセント辞典を読む、ということができます。
意外と間違って覚えているアクセントもあるので、こういう地道に勉強していく作業も大事かなと思っています。
特に地方出身でアクセントに自信がない人は、日常の中でアクセント辞典を眺める時間をとった方がいいと思います。
アクセント辞典に載っていないものは大辞林で
アクセント辞典に載っていないワードは、次軍として大辞林を使っています。
こちらも先ほどの物書堂のアプリ内で購入、インストールができるようになっています。
アクセント辞典のように読んでくれるわけではないのですが、画像の赤丸の部分のように、数字でアクセントが書いてあります。
これを見れば何番目の音が上がるかがわかる、ということですね…!
しゅごい…
アクセントが平板のものは「0」と書いてあります。
数字だけだとよくわからない〜〜
という人は、三省堂さんのHPに詳しく解説も載っています!
アクセント辞典よりはわかりにくいけど、アクセント辞典に載っていない単語も結構あるので、
仕事の時はどっちも手元にあった方が安心…
辞書は紙の方が好きですが、出先に重い辞書を二つ持っていくわけにもいかないので笑
どちらもアプリをインストールしております〜
物書堂さんは新生活応援セールとかで、学生向けだとは思うんですけど、たまにセールをやられていて、半額近い金額で辞書が買えたりするので、欲しい人はこまめにチェックしてみるといいかもしれません!
仕事道具と思って投資しよう〜!
→【声優が教える】滑舌を良くするために今日から気をつけられる事
アクセントにも流行がある!?
実はこのNHKのアクセント辞典、旧アクセント辞典と新アクセント辞典があります。
私がデビューした頃はこの緑のやつが一般的でした笑
そして新版のアクセント辞典が出た時に、結構アクセントが変わってるものがあって、業界内がかなり混乱したんですよ〜
こっちのピンクのキラキラみたいなのが新しい方なのでお間違いなきよう笑
言葉も新しい言葉ってどんどん生まれてきますよね!
例えば2021年のユーキャン新語・流行語大賞を見てみると、
- 親ガチャ
- Z世代
- 黙食
なんて言葉が載ってるけど、今手元にある国語辞典とアクセント辞典にはこの3つの言葉は載っていません。
意味はわかるし、私も結構使うようになった言葉だけどね〜
言葉と同じように、アクセントも新しいものが日々生まれていて、
その新しいアクセントで話す人が大半になれば、そちらが正しいアクセントとして採用されるようになる、ということです。
ややこしくて声優からしたら大変だけど、移り変わっていく言葉と文化って感じでエモいな〜
あと現場によって求められるアクセントが異なる時もあります。
例えば「彼氏」という言葉は頭高が正しいアクセントだけど、
若者は「カレシ〜」を平板で言う人も多いですよね笑(これもちょっと古くなって気もしたけど)
例えばスクールものの吹き替え作品とかだと、
「カレシ〜(平板)」のアクセントでお願いします〜〜
みたいなこともあるわけです笑
→声優は仕事内容、現場によって求められることが違うし芝居の種類にも色々ある
指摘されるまで気づかない事もある
アクセントって基本的に生きてきた環境に影響されるもので「それが正しい」と思って生きていくから、
自分のアクセントが間違っている、ということを学べる機会って「人に指摘してもらう」という機会くらいなんですね。
間違いやすいアクセントとかをレッスンなどで学ぶことはできてもこれはもう場数を踏んでいかないとどうにもならない、という感じです。
一番大切なのは「人に指摘された時にすぐに直すことができるかどうか」です。
私も何度も経験がありますが、現場でディレクションを受けて、すぐに自分の演技を直すことができないと、収録時間も長くなってしまうし、何より共演者、スタッフさんたちを長く待たせてしまうことになります。
飲み込みが早い、というのが一番大切な声優のスキルなんじゃないかと思うんですね。
大御所声優さんと一緒に共演することだってよくあることです。
そんな中でやっぱりスマートに仕事ができる人は音感が良いというか、アクセントも聞いてすぐに直せる人が多いと思います。
何度もリテイクになると、それだけで申し訳ない気持ちになるし焦りも生まれるし、胃が痛くなります笑
そのためにも、どんなアクセントがあるのか、
正解を探すのではなく、正解の引き出しをたくさん持っておくことが重要なんじゃないかと思います。
アクセントは学ぼうと思えば学ぶことができるものですが、自分が正しいと思っているものが間違っていると気づくまでにはかなり時間がかかります。
なので、普段から「この言葉はこのアクセントで合っているのだろうか?」と常に意識し、
手元のアクセント辞典で調べる癖をつけた方がいいでしょう。
現場でアプリを使ってると印象が悪いの?
質問箱でアクセント辞典について以下のような質問をいただきました!
紙辞書を現場まで持っていくのは大変すぎますよね…
自分のセリフの中でアクセントが気になるところに関しては、そもそも台本とVをチェックする時に調べておくので、現場で何個もアクセントを調べて…という状況にはならないはずです。
どちらかというと現場で「このアクセントなんだっけ?」と全体でざわざわする感じかな笑
そういう場合はスマホにアプリが入っている人が率先して調べる、という感じなので、スマホでアクセント辞典を調べてて印象が悪い…みたいなことには私はなったことがないです。
むしろアプリ入っててえらい、って感じ。
ただ最近は、情報漏洩などしないように、スマホが持ち込み禁止になっている現場もあります。
なので一世代前に戻る感じはあるけど、電子辞書がまた活躍するのかな〜って思ったりしています。
アクセント辞典が搭載されているかどうか確認してから買いましょう…!
私がデビューした頃はまだ電子辞書を使われていた方も多かったです。
時代を感じる…
スタジオにはアクセント辞典置いてあるとは思うので、とにかく「このアクセントで!」と言われた時にそれに修正できるかどうか、という方が大事だとは思います!
読んでくれてありがとうございました!
ではっ
ママァ!!!!!