声優が仕事で求められること、それはキャラの迅速な役作りです。
実は「迅速な」というところがとても重要です。
先日こんな質問をいただきました。
舞台や映像系の仕事だと、役と向き合う時間というのがとても長いんですが、声優の場合は役と向き合う時間が圧倒的に短いです。
例えば舞台の場合だと、本番の3ヶ月くらい前から稽古が始まり、セリフも覚えなくてはいけないので、相当な労力と時間を使って役作りをしていきます。
本番前一週間くらいは集中稽古といって大詰めの稽古があり、
毎日朝から晩まで自分の役や台本と向き合うことになります。
対して声優の場合は、「明日この仕事行ってください」という連絡が事務所から来ることも珍しくなく、
オーディションなんかはほぼそんな感じと言っても過言ではありません。
アフレコに行くにしても一週間前に台本をもらうことができたら早い方で、
本当に制作進行が遅れている場合は台本をもらえるのが前日だったり、現場によっては当日だったりすることもたまにあります。
そしてアニメ作品は3ヶ月に一回改編期があり、
それに伴ってオーディションラッシュも3ヶ月に一回やってきて、
さらにはワンクールの中でいろんな作品に出演していれば並行して役を演じていく機会がとても多くなります。
つまり、声優は役作りをするのに慣れないとできないし、
ものすごいスピードで役作りをすることが求められる仕事なんです。
原作を読む
原作のある作品の場合はとにかく原作を読むようにします。
原作が漫画にせよ小説にせよ、その中でいろいろと再構成されて、アニメで放送されるシーンとされないシーンが出てくるわけですが、
原作を読むことによってアニメの台本にはピックアップされなかったシーンも知ることができます。
つまりより多くキャラの生活を知ることができるので、
原作がある場合は必ず原作を読んで役作りをするんです。
受かるかわからないオーディションも、オーディションに間に合うなら原作は読んで役作りして挑みます。
最近は電子書籍ですぐに原作を購入して読めるようになっているのでかなりありがたいですね。
なのでたまにAmazonギフト券をプレゼントでいただくことがありますが、お仕事に役立ってとてもありがたいです。笑
ちなみにこういった資料を買うのも多くの場合は自腹になるので、売れないうちは声優にとっては出費がかさみます。
体格から声を作っていく
体格はキャラクターの声質を考える上でとても重要な判断材料になります。
例えば、声帯の長さはある程度身長に比例すると言われていて、
背が低い人は声帯が短いので声が高く、背が高い人は声帯が長いので声が低くなる、と言われています。
また、体のふくよかさで声の太さというのは変わってきますよね。
筋肉や脂肪のつき方などといった体格で声質がなんとなく想像できるところがあります。
なのでキャラデザをもらった時にキャラクターの体格を研究する、というのも
役作りをする上で大切なことです。
キャラのプロフィール
原作がないものや、原作があってもそこに書かれていないキャラクターのプロフィールをある程度自分の中で想像するのも私が役作りをする時にやることです。
これは間違っていてもよくて、
合っている合っていないということでなく、そのキャラクターのことをより深く想像するために行うことです。
- 家族構成
- 好きなもの嫌いなもの
- 信念
- 子供の頃の思い出の場所
- 人生で一番楽しかったこと、悲しかったこと
そういったことを間違っていてもいいから自由に想像します。
特に作品にそういったエピソードがなくても、
こういった想像をすることによってそのキャラがどんな人生を送ってきたのか、ということに少しでも寄り添っていけるんじゃないかと思っています。
アニメ作品で描かれるのはそのキャラクターの人生の中のほんの一瞬だと思うんです。
でもそのキャラクターには生まれてからこれまで、そしてこれからも人生が続いて行っています。
その奥行きがあるのとないのとではやっぱり演じる上で違いが出てくるんじゃないかな、と私は思っています。
あくまでこれは私がやっている役作り、ですが。
キャラクターの履歴書とかを書くのも結構楽しいです。
実体験とのすり合わせ
演技を行う上では自分の実体験の中でキャラクターの体験と似たような体験がないかな、ということをまず考えます。
というか台本を読んでいると自分の過去が蘇ってくるような時があります。
特にこれは負の感情芝居をする時が私の場合は多いです。
- 怖い
- 悲しい
- 苦しい
という記憶が役作りをしたり演じる上で出てくることが多いです。
よくあることですが、意外とお芝居って前向きで明るいお芝居をする方が難しいんです。
泣き芝居よりも笑う芝居の方が苦手な人結構います。
声優志望の人は「笑う芝居」が苦手な人も多いのではないでしょうか。
足りないものを補う
キャラの役作りをしているとどうしても自分にはそのキャラを演じるのにまだまだ足りない部分があるなぁというのをよく感じます。
私なんかは幼女役を演じることが多いのですが、
やっぱり中の人は大人なわけで、
子供の肺活量の無さだったり、それによる喋りの拙さだったり、子供ならではの感情の動きみたいなものがあって、
それは自分にはどうしても足りないものです。
だからそれを補うために子供と触れ合う機会をなるべく作るようにしたり。
それ以外にも、例えば魔法使いの役だったら魔法についての勉強をしてみたり、
頭のいい子の役だったら、頭いい人の喋り方を研究してみたり、
とにかく自分に足りないものを吸収するように勉強します。
これは役者ならではの楽しさなんじゃないかと思います。
役作りのために新しい習い事を始める人も多いですね。
役作りにはいろんな方法がある
今回は声優の役作りの方法についてお話していみました。
あくまで私の役作りの方法ですが、
声優の役作りは本当に楽しく、勉強になることがたくさんあります。
声優を目指している人はぜひ参考にしてみてください。
そして自分なりの役作りの方法もぜひ模索してみてください。
読んでくれてありがとうございました!
ではっ