2022年の3月末で3つの声優事務所がプロダクション・マネジメント業務を終了、
事務所の移籍をされる方、フリーランスとして活動を開始する方が本当に多かったなと思います。
新型コロナウイルスの影響もあり、声優業界も大きく変わらざるを得ない局面なのかな、と感じました。
この時期のニュースは業界関係者でも「え!」って驚いている人が多かった印象。。
私も事務所に所属していた時期があり、この記事を書いている今はフリーランス6年生(!)になるんですが、
フリーランスとして仕事をしていると「声優としての声の仕事」以外の業務も全部自分でやらなくちゃいけないので、まぁ大変でして!!!!!
そういうところを自分で経験してみて、改めて声優事務所って運営するの大変だろうな、って感じるわけです。
今日はビジネス的な目線で、声優事務所の仕組みについて、かなり詳しめに話をするよ〜!
もくじ
声優事務所、固定費やばいけど収入はめちゃめちゃ変動する
フリーランス個人であれば事務所を構える必要はないけど、声優事務所の場合はオフィスが必要になりますよね。
収録スタジオって都内が大半で、台本とか制作会社に取りに行かなきゃだし、って考えると声優事務所はそれなりに都内の中でも良い立地のところにあります。
そういうところでオフィスを借りようとすると、めちゃくちゃ小さいオフィスでも月に10万円以上。
それなりの広さを求めると30万円以上…
さらに同じ場所で養成所とかやるんだったらスタジオも必要になるのでもっとかかります。
事務所と養成所で、複数のフロアを借りている声優事務所もあり、月額賃料だけで数百万とか普通にいきます。
ヒョ…
さらにマネージャーさんやスタッフさんは毎月のお給料がありますよね。
その方の年齢やキャリアにもよると思うんですけど、一人雇用するだけで20万円〜40万円ほどはかかるでしょう。
一般的には「事務所」っていうと、タレントさんには一人一人マネージャーさんがついて…っていう想像をされると思いますが、
声優事務所の場合は一人一人にマネージャーがつくわけではなく、数人のマネージャーが事務所全体のお仕事を回している形がほとんどです。
マネージャーが一人という事務所もあるくらい。
めちゃくちゃ忙しい大御所声優さんとか、アーティスト活動が忙しい、みたいな声優さんだと、専用マネージャー的な担当がつくこともあるけどかなり稀です!
それでもマネージャーが3人もいれば、お給料だけで100万円くらいかかってきます。
でも新人声優のギャラは最初は1本1.5万円が相場。
事務所のマージンは3割〜4割くらいが普通なので、アニメに1本出ても事務所の収益は5000円前後。
アニメのレギュラーがあっても月に2万円。
アニメのレギュラーなんて1本取るのめちゃめちゃ大変なのに、、
ということで主に声優事務所が収益をあげられるのは付属の養成所から、ということになります。
事務所だけで運営していく、っていうのはビジネス的にあり得ないくらい大変、っていうか無理だと思うし、事務所に還元できるほど声優として稼いでいくっていうのもすごく大変です。
役者同士で集まると事務所の不満みたいなのいっぱい聞くけど
- 営業時間中常に電話の対応や事務処理など対応してくれるデスクさんがいてくれる
- 営業をかけてくれたり、仕事のフォローをしてくれるマネージャーさんがいる
- 事務所としてオフィスが都内にある
っていうだけでも本当にすごいこと。
フリーランスになって本当にここは改めてすごい環境でお仕事をさせていただいていたな、と感じました。。
所属声優のことを考えた支払いサイクルになっていれば、絶対苦しいと思う
私が以前所属していた声優事務所は、お仕事をした2ヶ月後のお給料で必ずギャラが振り込まれていました。
お恥ずかしながらフリーランスになってから気づいたけど
これってめちゃめちゃすごいこと!!!!!!なんですよ。
支払サイトと言って、お仕事をしてから実際にお給料が振り込まれるまでの期間は企業によって異なります。
取引代金の締め日から支払日までの猶予期間のことを指す。通常、日数を単位として表す。 商取引において、商品を売買する際の代金支払いにはいくつかの方法がある。
一般的には月末締め、翌月末払いが多いよね!
4月25日にお仕事したら、5月末に入金される、っていうこと。
私がお取引がある企業さまでは、一番支払サイトが長いところだと「20日締め75日後払い」というところがあります。
つまり4月25日にお仕事をしたら5月20日が締め日なので、8月5日頃に入金がある、ということですね。
お仕事をした日から入金までがものすごく長いのです。
企業によって支払サイトは全然違うので、お仕事する前にちゃんと確認しておいた方がいいよ〜!
私がいた事務所では月末締め、翌々月末払いだったので、支払サイトが長い企業さまと取引があっても、事務所が立て替えてお給料を私に振り込んでくれていたということ。
これはある程度現金を持っている企業じゃないとできないことです。
取引企業から振り込みが遅れたら、事務所から所属者への振り込みも遅れる…みたいなことはちゃんと考えてないと起こっちゃうと思う。
私は経理的に請求漏れみたいなのはたまにあったけど(これもちゃんと指摘して翌月振り込んでもらった)、振り込みが遅れてる…というトラブルは所属時代一切ありませんでした。ありがたい話。
請求漏れだって数年に1回くらいのペースだし、お仕事1本1本管理して請求して…っていうのをしてもらってたわけだから全然少ない方だったと思う。
フリーランスになると、本当に支払サイトが違ったり、取引企業さまそれぞれに請求書を出したりしなくちゃいけなくて、企業さまによって入金のタイミングも違います。
所属声優には決まった支払サイトで支払いをする、ということがどんなに大変なことなのかっていうのがよくわかるんですよね…
→フリーランスでギャラの未払い、ってよくある事。回避する為には?
所属声優から求められるものは多いけど人手が足りなさすぎる
同業者の話を聞いていると
- 現場にマネージャーがついてきてくれない
- 台本の回収が遅い
- 事務所からの連絡が遅い
みたいな不満をよく聞きます。
もちろん役者側の気持ちもよくわかります。
役者にとっては一つ一つの仕事が奇跡のようなもので、そのために本当に毎日とっても努力しているから。だからちょっとした事務所側のミスや遅れが許せないと思ってしまうことがあるのだと思います。
でも事務所も事務所で大変。
たくさん所属声優を抱えていれば、それだけ求められることが多くなるのに、事務所側の人手はまるで足りていない。
忙しい中一人一人とコミュニケーションを取る時間もとれず、役者側も「マネージャーさんはいつも忙しそうだから話しかけづらい」と思ってる人も多いでしょう。
そもそもに1本あたりのギャラが安い、事務所のマージンも安い、という中で回していくのは激ムズなビジネスなんじゃないかな…と思います。
それぞれのマネジメントが満足いく形で行えない、ということで事務所が閉鎖されるケースもあるんじゃないかな…
これからはバーチャル事務所じゃないけど、オフィスを持たず、必要な時だけ必要なマネジメントを、みたいな事務所が出来ていってもいいんじゃないかなと思います。
エージェント式みたいなものかなぁ。
→声優事務所のマネージャーの態度に不信感…というご相談に答えました
声優事務所所属とフリーランス、どちらが良いというのはない
声優事務所のビジネスについて少し分解してお話ししてみました〜!
声優事務所に所属することがゴール(目標)になってしまっている声優志望の方が多いですが、
事務所だってビジネスとして運営していってるので学校とは違うし、絶対的な存在ってわけでもない、ということがわかってもらえたら嬉しいです。
そして最近フリーになって活動される声優さんが増えていますが、フリー声優は一人で個人声優事務所やってるみたいなものなので、めちゃくちゃ大変です。
どっちが良いとか正しいとかではなく、どういうビジネス構造なのか、どういう働き方なのか、ということが理解できると、
どちらが自分に合っているのか、ということもわかるかな〜と思ってお話ししてみました〜!
読んでくれてありがとうございました!
ではっ
やっほい!声優ブロガーの幸田夢波です!