声優も役者のうちですから
役者として別の媒体で声優以外のお仕事をさせていただくこともあります。
舞台の芝居もそうですしあとは映像のお芝居もやることがあるんですね。
そもそも私は自分が映像学科出身というのもあって、
大学でも映像の勉強をしていました。
声優の仕事の方が長いですが、映像のお芝居をやってみると全然芝居の質が違うなと感じることがあります。
では声優のお芝居と映像のお芝居の違いはどこにあるのでしょうか?
声のボリューム
まず声優の芝居と映像の芝居では、声のボリュームが圧倒的に違います。
声優の芝居は声で伝えなくてはいけない部分がたくさんあるので
日常的にはそのような声量では話さないだろうなというボリュームで作品中に会話をすることがよくあります。
ただこれは単純な声量をということではなく、音圧と呼ばれる音の圧力をコントロールしている部分が多いにあって
単純にボリュームが大きいだけだと見ている人にとって違和感が感じられるようになってしまうのですが
音圧が大きいことによって、聞こえる感じではそこまでを声を張っているという感じではないのにしっかりと聞こえてくる、というような音にすることができます。
しかしこれをそのまま映像芝居でやるとかなり浮いてしまいます。
前に映像のお芝居の中に声だけで出演するという機会があったのですが、これを声優のお芝居と同じようにやってしまうとすごく違和感があります。
映像というのは日常の切り取りであることが多いので、
意図して見せようとしてないお芝居の方がすんなり視聴者に見てもらいやすいんだと思うんですね。
なので声優のお芝居を映像のお芝居にそのままはめ込んでしまうととても違和感があるのです。
セリフの違い
セリフでも大きな違いがあります。
例えば声優のセリフな場合はアドリブセリフが多くて、
走る時の息づかいだったり、何かに気づいた時に「ん?」というような声を入れたりすることがあります。
しかしこれは映像芝居ではあまり見られるものではありません。
映像芝居は役者の動きによってそれを視聴者に伝えることができますが
声優の芝居の場合は、細かいところを声や音で伝えていく必要があるので、
リアルだったら絶対に発しないだろう音というものが台本に書かれていることがとても多いのです。
これも声優の芝居と映像の芝居の大きな違いなのではないでしょうか。
表現の違い
映像の芝居と声優の芝居では表現の違いも大きくあります。
色々な動作をオーバーにやるのが声優の芝居とも言えて、
例えば「ご飯を食べる」という表現があった時、声優の芝居の場合は咀嚼音となる音を録るのが一般的だと思います。
しかし実際にご飯を食べている時は、マナーが悪くなければあまり咀嚼音というものはしないと思うんですね。
映像の中でご飯を食べるシーンがあっても、演出意図がない限りはこれみよがしに咀嚼音を立てるということはなかなかないと思います。
こういった表現の違いも映像の芝居と声優の芝居では大きな違いがあります。
テクニック
声優の芝居の場合は芝居をしているところが視聴者に見えないのでわからないかと思いますが
芝居をするときにマイクワークという技術的なことをやっています。
大勢で収録をする時の作品の場合は、マイクは3本から4本しかなく、そのマイクをみんなで共有しながら仕事をしているので
自分がどこに座るのか、どのマイクに入るのかということを記憶しながら芝居をやっています。
これがなかなか器用じゃないとできないことだと思うので、実際に現場に行くと最初はわたわたすることが多いと思います。
さらにマイクは声を録音してくれているわけであって、
リアルな音が空気振動によって生でお客さんに届くわけではないですから、
小さい声のセリフの時はマイクに寄ったり、大きい声でセリフを読むときはマイクから少し引いたり、マイクの中心から外れたり
というようなこともやっています。
マイクとのかけひきですね。
細かいことをやりながらお芝居をやらなくてはいけないのが声優の難しさでもあるのではないかなと思います。
声に乗せる情報量が圧倒的に違う
ということで映像の芝居と声優の芝居の違いについてお話ししてみました。
声優のお芝居の場合は声に乗せる情報量が圧倒的に多く、映像の芝居にそれをそのまま当てはめてしまうと浮いてしまうものです。
改めて芝居の種類に関して実感したことを自分の覚書としても書いてみました。
読んでくれてありがとうございました。
では。