最近では俳優さんや女優さんがアニメーションや吹き替え映画の声優を務めることも多く、
声優と俳優の境界線も曖昧なものになってきたなと感じます。
やっぱり思い入れの強い作品だったりすると、有名な俳優さん、タレントさんを声優として起用するのを嫌がる声もありますよね。
賛否両論あるのもわかりますが、俳優さんが声優として起用された作品で感激するものも確かにあると思います。
声優では出すことのできない俳優さんならではの味というか。
では声優と俳優の違いはどこにあるのでしょうか?
もともと声優という職業はなかった
私もこれは大先輩にお話を聞いたことがあるだけで、実際その時代を生きていたわけではないのですが
もともと今ほどアニメや吹き替えの作品数もなく、昔は声優という職業自体がなかったそうです。
俳優さんが自分の体を使ってお芝居をする仕事をメインとする傍ら、
スケジュールに余裕があったら声の仕事をする、というのが声優の仕事のもともとの形だったんだとか。
その時代からは考えられないほど作品数も増えて、声の仕事をメインの仕事とする声優という職業が生まれたそうなんです。
確かにここ数年だって作品はどんどん増えてきていますよね。
深夜にテレビを点けたらどこかしらでアニメを放送しているし、
海外ドラマを多数扱うビデオオンデマンドサービスもたくさん増えました。
そのおかげで声優が必要とされる場は確実に増えてきていると思います。
それを越す勢いで声優になりたい人が多すぎて声優業界が供給過多になってしまい、
いろんな問題が出てきてしまっているようなところもありますが。
俳優と声優の演技の違い
俳優さんの演技と声優の演技で何が一番違うのかというと
やっぱり真っ先にあげられるのは「芝居の情報量」だと思います。
俳優さんは自分の体と声、つまり視覚情報と聴覚情報の両方を使ってお芝居をすることができますが
声優は聴覚情報のみで芝居を伝えなくてはいけません。
これはどちらがいい、悪いの話ではなくそれぞれのお芝居の特性の話です。
芝居の手段が声だけしかない声優の場合、俳優さんの芝居に比べて声にのる情報量がかなり多くなります。
例えば走るお芝居。
ドラマCDやラジオCMなんかを聞いているとわかると思うんですが、
声優が走る演技をする場合はそれを音だけで伝えなくてはいけないので
走っている時の声をかなり盛って演技します。
実際走っている時よりはかなり息の使い方が荒いはずです。
長く走っている演技をしていると実際に走るよりも酸欠になるので、ちょっとふらっとすることもよくあります。笑
でも多分音だけで聞く分には「走っているな」と認識される息遣いなんだと思うんですね。
逆に俳優さんが走る演技をする時というのはドラマを見ていると息遣いの音が入っていないことも多くあります。
後ろで音楽が流れていることも多いですよね。
走っている姿が映されているだけで「走ってるな」ということを視聴者が理解できるからです。
なので、声のみの芝居で考えた時、声優の方がオーバーリアクションに聞こえると思うんです。
でもそれがアニメーションだったり、作られた映像に乗せる音声の場合はしっくりくるんですね。
逆にそこに俳優さんの演技が乗ると驚くほどナチュラルな演技に聞こえます。
どちらかというとあっさりした演技に聞こえるかも。
でも俳優さんの演技も作風によってとてもマッチする場合があります。
画よりもお芝居に重きを置いている作品だとか、スローテンポで味わい深い作品だったりするもの、
あとはリアルが求められる実話に基づいた作品だったりなんかすると、
声優よりも俳優さんの演技の方がしっくりくることもあるんじゃないかなと思います。
声優が俳優をやる時の苦労
声優の中には舞台をやる人も多く、私も舞台にはよく出演しています。
舞台のお芝居というのは視覚的表現が増えるので。声優の芝居よりは俳優の芝居に近いお芝居になります。
普段から声優の仕事をしていると声優としての演技が染み付いてしまっていて、
なかなか舞台の時の視覚的な見せ方を工夫することができず、「自分は本当に動けないな」と感じることが多くて難しいです。
あと、舞台をやっていると声優と俳優の大きな違いを感じるのは目線のやり方です。
声優は普段台本片手に仕事をしているので基本的にセリフを覚えることがありません。
なので目線も台本とモニター(声を当てる映像が写っている画面)を行き来するだけなんです。
舞台上でセリフを覚えた状況になるとなんだか丸裸になったような気持ちがしてすごく不安な気持ちになります。笑
台本もないし、動かなくちゃいけないし…みたいな感じで最初は本当に苦労しました。
小劇場の場合は特に、お客さんは俳優の目線を追っています。
芝居を見る時にぜひ自分の芝居の見方の研究もしてみて欲しいんですが、
芝居を見る時は俳優の目線の先をきっと追いかけていると思います。
だから自分がどこを見るか、ということも一つの見せ方になるんだなぁ、と舞台をやった時には新発見でした。
声優と俳優は違う職業
声優と俳優の違いについてお話してみました。
私は声優と俳優は全く違う職業だと思っています。
むしろ媒体が違うお芝居は全くちがうお芝居だと思っています。
声優の芝居も、舞台俳優の芝居も、ドラマや映画に出ている俳優の芝居も全部それぞれに特徴があって違うもののように感じているんです。
セリフ覚えたり覚えなかったりもそうですが、お仕事の事前準備の方法も全く違います。
もちろん結局はお芝居ですから垣根を超えた仕事をすることがありますし、それがまた自分のメインの仕事の役にも立つんだろうな、と思っています。
何にも言えることですが、演者は常に、何をやるにも本業に活きてきますから、いろんなことを経験するのが大切なんだと思います。
読んでくれてありがとうございました。
では。