先日全く違う業界でご活躍の方に
「声優さんって、役によって声を変えたりするんですか?」
というご質問をいただきました。
これについては賛否両論ありますし、私も思うところが結構あるので今回はそんな話をしてみたいと思います。
もちろん役ごとに役作りはしますから、役ごとに芝居のニュアンスが変わることもありますし
骨格によってそのキャラクターの声の出し方も変わってくるので役によって声を変える、ということもあるのですが、
そうでない人もいらっしゃいます。
地声にこだわる人
特にベテランさんの場合は自分の地声にこだわる声優さんもいらっしゃいます。
収録現場でディレクター側から「もう少しこういう感じで出せますか?」というディレクションがあった時も
「自分はこの声は変えないよ」
と意見されていたベテラン声優さんもいらっしゃいました。
声優が供給過多すぎるというか、たくさんいる今と
昔の作品数も声優の数も少なかった時代では声優の在り方もかなり変わっていて、
昔は声を聞いただけで「あの声優さんだ!」と判別できるような特徴的な声の声優さんが多かったように思います。
一説には現代の人の方が食生活の変化から骨格がかなり小さくなってきていて
顎や口周りの筋肉も小さく、弱くなってきているから特徴的な声の人が減っているんだ、という話もありました。
そう言われると納得かもなぁと思いました。
でも声を聞いて「あの声優さんだ!」って判別するのが視聴者としては作品の楽しみ方の一つでもあったりしますよね。
声を変える声優さん
最近のアニメや吹き替えの現場では役によってガラリと声を変えることができる声優さんが重宝される現場も多いです。
というのも、やはり作品数が多くなってきたことが一番の原因なんじゃないかと思います。
吹き替えの場合はアニメ以上に登場するキャラクターの年齢層も幅広いですよね。
なので老け役ができるような声優さんが重宝されることがあります。
動画コンテンツ配信サービスが一気に増えたこともあって、今吹き替えの現場ってもうてんやわんやみたいになってるんですね。
1日に複数本収録する、というのが結構当たり前になってきました。
普通だったら2時間の映画1本は1日がかりで収録することがおおいんですが、
1時間のドラマを1日に3本録ったり、4本録ったり、ということもよくあることです。
私は3本録りの経験しかありませんが、文字通り朝から晩まで、という感じでお仕事自体はとても楽しいんですがものすごく集中力を使うのでやっぱりヘトヘトになります。
そしてそういう現場ではモブキャラも出てくることが多いので
兼ね役も多くなります。
やっぱり役によって差別化しないと視聴者側に違和感を与えてしまうこともありますから、声を変える、ということはよくあることです。
それは声のトーンだったり喋り方だったり
声というよりも芝居を変える、という方が近いのかもしれません。
誰かの真似じゃ勝てない
もちろん声を変えることができる声優さんは重宝がられることが多いんですが、
仕事をある程度もらえるようになってくるとこれが悩みになる時もあります。
私もどちらかというと自分の声に特徴がなくて、いろんなキャラクターを演じ分けると作品を見てくれた友達や家族から「分からなかった」と言われることが多いんです。
それが一時期悩みのような時がありました。
でも特徴のない声なんかなくて、それは自分の本当の声質を理解できていないまま、他の声優さんの真似になってしまっているだけなんじゃないかな、と先輩にお話しして頂いた時に
ものすごく納得することができました。
アニメが大好きな自分は、やっぱりキャラクターを見た時に他の声優さんの声が思い浮かんでしまう時があります。
でもそれを自分のものにできなければ、結局他の声優さんの真似になってしまって
真似ってやっぱりオリジナルに勝つことはできません。
すでに有名な声優さんと、似たような声を出す新人だったら、やっぱり有名な声優さんを起用したい、という風にスタッフ側もなるとおもうんです。
だから自分の本当の声質を理解して、それをうまく武器にしていくことができない限り、この業界で勝っていくことはできないんだな、と感じました。
声を変える、というのが必ずしもいいことではないし、すごいことでもないのです。
声を変えるよりも芝居を変える努力をしなさい、と言われたこともありました。
本当にその通りだと思います。
戦略は人によって違う
今回お話ししたのはあくまで一例であって、声優さん個人個人によって戦略は全然違います。
声を変える必要がない、と思っている人もいるし
声を変えることができる人の方がいろんな役ができて重宝がられることもある。
それは自分の声との相談だと思います。
自分はこういうイメージ、という強いイメージを付けることができれば
「こういう役はこの声優さん」という風にキャスティングしてもらえることだってありますからね。
声優になりたいと思っている人はぜひ自分の声の本質について今一度じっくり考える時間を作ってみてもいいかもしれません。
読んでくれてありがとうございました。
では。