よく声質がいい人の方が声優になりやすいんだろう、と思っている方がいます。
男性なら低くてダンディな声、女性なら高くて可愛らしい声、みたいな
持って生まれた声質こそ声優に必要なものだと。
でも実は声優に必要なものはいい声質、という訳ではないだろうと私は思っています。
今回は声優になるために声質は必要なのかどうか、というテーマでお話してみたいと思います。
声質がいい、は人によって違う
まず声質がいい、というのは好みの話ですよね。
人によって「この人はいい声質だな」と感じる人が違うと思うんです。
メディア媒体で比較してみるとよくわかることだと思うんですが、
女性の場合、例えば声優さんがよくやってるネットラジオだといい声質と言われるのは元気で明るい可愛い声だと思います。
でも公共FM系のラジオだといい声質と言われるのは低めの女性の声なんですね。
その違いが出てくるのはユーザー層が全く違うから当たり前の事だと思います。
ネットラジオはエンターテイメントのコンテンツとして楽しむ人が多いですが、公共ラジオは一番の目的は情報を仕入れることです。
- 交通
- 天気
- 催事
- 災害
などの情報。
これらを仕入れるのを目的として聞いている人が多いのが公共ラジオだと思うんですね。
だから落ち着いた声でわかりやすく聞こえる声質の方が求められますよね。
伝える内容やコンテンツ、メディア媒体によっていい声質の基準は大きく変わります。
もっと細かいことをいえば、一人一人、人の顔の好みが違うように、声の好みも違うはずなんです。
高くて可愛い声質が好きな人もいれば、
そういった声質はうるさく聞こえるから嫌い、という人もいる。
低くてダンディな声質が好きな女性もいれば、ショタっぽい声質の方が好きな女性もいる。
だから「声質がいい」なんていうのは人によって違うんです。
ただ「マイクに乗りやすい声質」というのは確かにあります。
声の中の息の分量だったり、倍音がどれくらい多いかどうか、ということに影響されます。
ただこれは声質を研究して自分なりに改善していくことが可能なので努力でどうにかなる部分です。
作品にはいろんな声質が必要
作品を見ていてどのキャラクターも全て声質がいい、と思うことはないと思うんです。
作品には意地悪なおじいさんも出てくるし、憎たらしいキャラクターも登場しますよね?
ダミ声の人もいるし、ハスキーな人もいます。
でもそれは作品に絶対に必要な声質です。
声質からそのキャラクターの性格がなんとなく汲み取ることができるような声質って素晴らしい声質だと思います。
だから「声質がよくないから声優にはなれないだろう」と思っている人がいたらそれは間違いです。
確かに「主人公にはなれない」かもしれません。
でも変な声質というのは作品の中で必要とされることは多いです。
主人公になりたいんじゃなくて声優になりたい、と思うなら変な声質な人も絶対に需要があるのが声優業界です。
もちろん声質が変わっているから声優になれる、というわけでもないですが。
実際に声優業界でも「一般的にはいい声質とは言われないけれど、自分には自分が必要とされる現場がある」と誇りを持ってお仕事をされている方はたくさんいらっしゃいます。
声優業界の中で声質による棲みわけ、みたいなものがあるんですね。
だからデビューしてから少しずつ声優業界で名前が売れてくると、「オーディションでよく会う声優さん」みたいなのが現れます。笑
このキャラクターを決めたい、というオーディションで似てる声質の声優さんが呼ばれたりするんですね。
→声優の芝居にも色々な種類がある?作風や現場によって変わる演技
仕事をとるために声質を考える
声優の仕事をとることができるようになるためには何よりもまず自分のことを理解する、ということが大切だと思います。
自分自身が商品であって、自分でその商品を売り込んでいかなくてはいけないようなところが声優にはあります。
もちろん見た目の事を考えるのも今の声優業界では特に大切なことでしょう。
それに加えて、自分の声質はどんなキャラクターに向いているのか、ということも考えてみるといいと思います。
新人声優のうちは「こういう役だったらあの声優さんにやってもらいたいな」と制作側に思い出してもらえるような声優さんになることが大切だ、
と昔マネージャーに教えてもらったことがありました。
結局そういう世界で、
どれだけ人の印象に残って、思い出してもらえるかが勝負なのかな、と思います。
だから自分自身が自分の声質について「こういう役が合うんじゃないか」ということを常に考え続けるのが結構大切な事なんだと思います。
声質は関係ない
結局のところ、いい声質かどうか、というのは声優になるには関係のない事なんだと思います。
大先輩が
「みんなそれぞれ声質なんて違う。一人一人違って個性のある声質を持っているのに、誰かの真似をしようとするから今の声優さんは似たような声になるんだ」
というお話をされていました。
その通りなんだと思います。
供給過多な声優業界で個性を出しつつ仕事をしていくには自分が自分の個性を理解することがまず大切なことなのかなと思うんです。
読んでくれてありがとうございました。
では。