質問箱にて、今回はこんな質問をいただいていました〜!
鼻濁音(びだくおん)って声優やナレーターの勉強をし始めた人が一度はつまずくポイントだよね!
色々な考え方があると思いますが、私個人は
- ナレーションなどの硬めの文章を読む時は意識した方が良い
- セリフは役柄に合わせて要不要の判断をする
という方向性でやっています。
もちろん現場で音響監督さんに
ここは鼻濁音でお願いします〜
と言われたら、そのようにすべきだと思うけど、
私が行ったことのある現場では「鼻濁音にしてください」っていうディレクションは聞いたことがありません。
同じ類だと、「無声音にしてください〜」っていうディレクションは聞いたことあるけど、鼻濁音に関するディレクションは聞いたことないんだよなぁ
実際現場で指摘することとかあるんですかね?教えてパイセン
鼻濁音とは?
鼻濁音について簡単に説明しておきます。
そんなんもう知ってるよって方は読み飛ばしてください〜
ガ行を少し鼻にかかった音で発音することを鼻濁音と言います。
発音記号は「ŋ」という記号になり、「が」を発音する時に「んが」と発音する時のようなイメージで、鼻から息を抜きながら発音をします。
また、鼻濁音化しない音と区別するために、半濁点(゜)をつかって「か゚、き゚、く゚、け゚、こ゚」と表記されることもあります。
全てのガ行でこの発音の仕方をするわけではなく、鼻濁音化する音には法則性があります。
1.語頭においては、原則として[ガ]行音に発音する。(例)ガッコー(学校) ギモン(疑問) ゴジツ(後日)
2.助詞の「ガ」は[カ゚]と発音する。(例)ワタシカ゚(私が)
3.語間においては、原則として[カ゚]行音に発音する。(例)カキ゚(鍵) ウク゚イス(鶯) エンケ゚ー(演芸) ゴコ゚(午後) ショーカ゚ッコー(小学校) ジョカ゚ッコー(女学校)
4.「カキクケコ」の連濁は原則として[カ゚]行音に発音する。(例)ハルカ゚スミ(春霞) ホンキ゚マリ(本決まり) ウバク゚ルマ(乳母車)
5.数詞の「五」は、原則として常に[ゴ]と発音する。(例)ゴマン・ゴセン・ゴヒャク・ゴジュー・ゴエン(五萬五千五百五十五円)
6.カナ四字(又は六字)から成る擬声語では、語間でも[ガ]行音に発音する。(例)ガンガン ギシギシ グングン ゲラゲラ ゴンゴン ガランガラン
7.省略
8.複合語中、意味上よりする心理的ポーズのある場合は、語間でも[ガ]行音に発音する。(例)オンガク・ガッコー(音楽学校) ローア・ガッコー(聾唖(ろうあ)学校)
9~19.省略
上記は日本語アクセント辞典から引用しています!
同じガ行でも鼻濁音化するものとしないものがあるので、そこが分かりにくいポイントで、
鼻濁音を勉強し始めると大体の人が、
これは鼻濁音…?あれ?どっちだっけ?なんやねん分からんわ!!!!
となりがちです笑
まじ癇癪
鼻濁音の詳しい説明などは本筋から逸れるので今回は割愛します〜〜
まず鼻濁音を使う意味を考えよう
さてこの鼻濁音。
声優やナレーターの勉強を始める前から意識して発音している人はいないと思います。
もちろん学校教育でも扱われていません。
でも放送業界で活躍するアナウンサーさんの発音教育では必ず扱われる内容で、
「読み」を仕事とするならやっぱり避けて通れないものです。
聞いている側はほとんどの方が鼻濁音かどうか、なんてことは全然気にしてないと思うんですけど、
じゃぁなんで鼻濁音を使うのか!というと、以下のようなメリットがあります。
- 濁音が美しく綺麗に聞こえる
- 丸く、柔らかい印象になる
ガ行をそのまま発音すると汚かったり、刺々しく感じる音になります。
それが鼻濁音を使うことによって、落ち着いて深く聞き取りやすい、優しい印象に変わるんですね。
それで放送業界でも厳格に使い分けされてきた、という背景があるようです。
私もその時代を生きたわけじゃないので、当時の雰囲気は分からないんだけど
鼻濁音を含めた滑舌・アクセントについては、昔は間違えると超怒られたらしいよ…!
実は鼻濁音は衰退中…鼻濁音の発音で受ける印象は?
放送業界では徹底されてるよ!って話をしたけど、
テレビやラジオを聴いていて
あれ、鼻濁音化する音のはずなのに、鼻濁音使ってないなぁ
ということは結構あります。
実はこの鼻濁音は若い世代で特に衰退傾向にあって、
昔に比べると、
鼻濁音化しろぉぉぉおおお
みたいな風潮はなくなってきてるみたいです。
声優養成所でも厳密には扱わないところもあります。(私が養成所に通っていた時は、ガッツリ鼻濁音のことをやった覚えがありません)
ただやっぱり、プロとして活躍していきたいのであれば、こういう知識は身につけておいて、いざ必要な時にちゃんと出来た方がいいかな、と私は思っています。
そういう細かいところをちゃんとできるかどうか、がライバルとの差別化につながるんじゃないかな!
だけど、衰退傾向にあることによって、鼻濁音を使った読みをすると
- 古臭い印象になる
- (音としては柔らかいけど)硬いイメージになる(「ちゃんとしてる」という意味で)
- 方言っぽい(実際、鼻濁音は東日本方言を中心に見られる要素らしいです)
という印象を受ける気がします。
年輩の女優さんやナレーターさんほど、鼻濁音しっかりしてる、というイメージかな〜!
セリフでは鼻濁音を意識する時としない時がある
さて、ご質問いただいていた「セリフの時に鼻濁音を意識するか」というところですが、
先に述べた通り、鼻濁音をしっかり発音することで、
- 古臭い感じ
- ちゃんとした感じ
- 方言っぽい感じ
が出ると思っていて、こういう雰囲気が出て欲しいキャラクターはあえて鼻濁音を使って、
逆に若々しい印象にしたいキャラクターの場合は鼻濁音を使わない、という使い分けを個人的にはしています。
あくまで個人のやり方なので正解かどうかは知らんよ!
人によっても違うと思います。同業の方はぜひ「こうしてるよ!」っていうのが他にあれば教えてくださいませ〜〜〜
少年少女がしっかり鼻濁音を発音していると、
ん〜〜〜なんか違うかも、、
と思っちゃうんですよね笑
ただ、少年少女役でもしっかり鼻濁音を使っている声優さんもいらっしゃいます。
逆に鼻濁音使ってないな〜っていうセリフも、アニメを見ていると多いです。
ナレーションでは鼻濁音は意識していますが、逆にアニメだと違和感になることもあるかも。
ナレーションは「説明」が主な目的だけど、アニメや吹き替えの作品になると「表現」が目的なので、絶対にこうしなきゃいけない、というのもない感じがしますね〜!
→声優は仕事内容、現場によって求められることが違うし芝居の種類にも色々ある
「ことば」は時代とともに変わっていく
昔は鼻濁音にすべき音が鼻濁音になっていないと超怒られたけど、今はそうでもない。
みたいな話は結構あるあるで、
「ことば」は時代とともに変化していくものです。
「ことば」も「文化」だからね!
例えば、さっき紹介したNHKのアクセント辞典は新装版です。
私が声優デビューした頃は、古い方のアクセント辞典を使っていました。
読み比べてみるとわかると思うんだけど、アクセントが変わっている言葉がたくさんあります。
新装版のアクセント辞典が出た時は、業界でも混乱の声がすごい上がっていたんだよ!
みんな「アクセント変わっててびっくりしたんだけど!やば!対応できん!!」って焦ってた笑
いまだに混乱は続いている節があります笑
時代を表す言葉って日々生まれていて、例えば「草!」みたいな言葉もネット用語「ww」からの派生だけど、
まぁみんな「草」って言ったら「ウケる、おもろい」みたいな意味で理解するじゃん。
でも冷静に考えてみると
草ってなに
って感じだよね草
(外国人の方が日本語勉強するのって超大変だろうな、っていつも思うよ)
そういう言葉・文化の変化にいつも敏感でいること、
その変化がどんな背景で起きたのか、ということを日々学ぶことが楽しいのかなと思います。
こういうの学ぶのにおすすめなのがまたまたNHKさんから出ているこの本!
つい最近もナレーションがちょっと気になって調べたらことばのハンドブックが検索結果で出てきて「さすが…」ってなったんだ…
こういう勉強は常に続けていかねばですな〜〜〜!
→【声優志望向け】アクセントがわからない!音感を鍛えるには?
読んでくれてありがとうございました!
ではっ
やっほい!声優ブロガーの幸田夢波です!