声優はアフレコ現場に行くと、音響監督さんから「ここのセリフをもう少しこうして」というディレクションを受けます。
その受けたディレクションに対して、どれだけ柔軟に対応できるか、さっきやった読みと違う読みができるか、というところが、プロの腕の見せ所だと思っています。
声優志望の方には養成所やワークショップとかでレッスンを受ける時に、
ぜひ「さっきやったものとどれだけ違うものが出来るか」っていうことを考えてほしいです。
原稿に対して色々なアプローチの仕方ができると、より制作側が求める表現に近い演技ができるし、
それどころか制作が想定しているものよりももっと良いものを提案できることもあるかもしれない。
それがたくさんの人で一緒に作品を作る楽しさだとも思っています。
ただ、
演技の引き出しってどうやって増やしたらいいの?
と悩んでしまう人も多いと思うんですよね。
先日質問箱で以下のような質問をいただきました。
ブログ読んでくださってありがとうございます、嬉しいです^^
いただいた質問に対して、Twitterで以下のようなことを話してみたんですが、
ちょっと全然話し足りないのでw
ブログでも詳しく掘り下げていきたいと思います〜!
もくじ
同じ台本でもアプローチの仕方で芝居は大きく変わる
養成所やワークショップなど、複数人でレッスンを受ける場に参加している人は、同じ台本でも読み手が違うとアプローチが全然違う、っていうのを体感したことがある人が多いと思います。
レッスンで扱う教材で、自分が演じるのと他の人が演じるのでは芝居が違って、「あ〜!この人が演じるとこうなるのか〜!」「そういう解釈があったか!」というような発見があるものですよね。
こういう発見は多人数でのレッスンならではのもので、
どうしてもグループレッスンだと講師が一人にかけられる時間は短くなってしまうものなんだけど、
その代わり、他の人のアプローチを見たり、それに対する講師の意見を聞けるというのはとても勉強になると思います。
だからグループレッスンの時も、自分のことだけじゃなくて、他の人の芝居にも注目して「このアプローチいいな!」とか「自分だったらもう少しここをこうするけどな!」とか、
講師になったつもりで「ここがもうちょっとこうなるともっと芝居良くなるんだけどな〜」みたいなのを考えながらレッスンを受けてみてください。
自分のターンじゃない時間も、こういう意識があるとかなり吸収できるものの量が変わってくると思います。
そして今回お話ししたいのは、
演技への色々なアプローチを自分一人の中からたくさん生み出す方法です。
→声優の芝居にも色々な種類がある?作風や現場によって変わる演技
台本から読み取れるものは外れてはいけない、まずは読解力をつけよう
まず台本読解をしていく上で大切なのは、もらった台本の中から読み取れるだけ条件を読み取っていく、という作業です。
例えば、
- キャラクターの性別・容姿・年齢・育ってきた背景
- 他の登場人物。さらに自分が演じるキャラクターと他の登場人物の関係性
- 場所
- 時間帯
- どんな動きをしながらセリフを喋っているのか
というような情報ですね。
台本に書いてあることは「決定事項」なので、その条件からは外れちゃうと演技が破綻してしまいます。成立しない演技、ということ。
台本をもらった時にストーリーを追いかけるのはもちろん大切なので、最初はざっとストーリーを追いかけるために読んでみて、
あとからこの「条件」を抽出するために2回目を読む、みたいなことをやってみるといいかと思います。(もちろん何度読んでもOK)
時間とか場所とか、台本の中から読みとれる「演技をする上での条件」に赤丸をつけていく、とかやるとよりわかりやすい。
慣れてくると1回読むだけでストーリを追いかけて条件も拾っていく、っていうのがざっくり全部できるようになります。(もちろんしっかり芝居をやるのに読み込みはすることが多いけど)
こういう読解力はもう国語でしかないと思っていて、
普段どれだけ活字媒体に触れているか、っていうのも結構大事なんじゃないかと思ってます。
難しい読書は苦手…って思ってるなら漫画とかラノベとかでも全然いいから、とにかく作品に触れて、コンテンツから情報を読み取る訓練を日頃からしてみるといいかと…!
原作がある作品に関わる場合は、声優も必ず原作を履修するしね!
食ってみて嫌いだったら辞めちゃってもいいので、食わず嫌いだけはしないように。とにかく色々なものに触れてみて〜!
ということで私のおすすめの本たちを置いておくねっ(布教)
あ、あと声優志望の方にぜひ読んで欲しい本もまとめてるのでこっちもぜひ!これはどちらかというと実用書的な本(業界の話とか発声の仕組みとかの本)をまとめてる方です。
台本に書いてない設定は自分で自由に変更できる条件
はい、でここからが演技のバリエーションを増やせる部分。
台本に書かれていない設定というのは、自分で自由に変更ができる条件です。
掛け合い相手との親密度
例えば女二人の掛け合いの芝居だったら、その女二人の関係性が
- 母娘
- 姉妹
- 親友
- たった今知り合った人
とか、色々考えられると思うんですよ。(台本にそういった条件の記述がなければ)
この設定を変えるだけで演じ方が全然変わってくると思います。
普段自分が生活している中でも、
- 親と話す時
- 親友と話す時
- 初めましての人と話す時
では全然声のトーンとか違いますよね。
普段生きている中では無意識でやっている使い分けなのに、演技、ってなるとできなくなることが多いんですよね。
ぜひ掛け合いの演技の場合は、相手との関係性の設定を変えてみたりして、違う演技にならないか、研究してみてください〜
距離
これも演技ががらっと変わる条件の一つです。
100メートルくらい離れてる人に話すときは大声になるだろうし、
3〜4メートルくらいの時はちょっと声が大きくなる。
逆にすぐ隣にいる人に対しては声は張る必要ないし、耳に直接こそこそ話であれば、大きな声では話さないでしょう。
こんな風に、声をかける対象がどこにいるか、というのでも出てくる声が全然変わってきます。
台本には距離が書かれていないことが多いので、割とみんな距離に関しては意識できていない人が多くて、
話す相手が変わっても同じ距離感で話してたり、演技の中の動きが見えない表現が多いです。
自分からどれくらい離れたところにその人がいるのか、ということをイメージした上で演技してみるようにしてみてください。
台本に指定がなければ、その距離感も自分で決めていけばおっけー!
練習で、距離を色々変えてみて台本を読んでみるのもおすすめです。
時間帯
これも結構普段、無意識にやってることなんですけど、
お昼に友達と喋ってるのと、夜に友達と喋ってるのとだとまた少しトーンが変わったりしています。
お昼は元気にはつらつと喋っていたのに、夜は少し落ち着いたしっとりしたトーンになる、みたいなこともよくあること。
台本の中の時間についても意識してみてください。
書かれていない場合は、ざっくり
- 朝
- 昼
- 夜
この3パターンでどうイメージが変わるかなぁって思いながら演じてみると、演技にバリエーションが出るかも。
居る場所
これも普段無意識にやってることだ!
芝居って結局普段の自分を観察するのが一番勉強になったりするよね
例えばめちゃくちゃうるさい居酒屋で友達と喋ってる時。
周りがうるさいから声が聞こえにくくて、こっちの声も相手に聞こえにくいだろうから、かなりの大声で喋りますよね。
逆に図書館とかに居たら?
喋っちゃいけないのが基本だからちょっとヒソヒソ声になる。
そういう場所による制約みたいなのもあります。
それによって同じセリフでも全然演じ方が変わる。
そんなこんなで、今思いつく条件をいくつか書いてみたけど、こんなのは無限に出てくるものなので、自分で設定作って色々試してみてください〜〜!
ちょっとした条件を変えてみるだけで演技にバリエーションっていくらでもつけられます。
そういうのが演技の楽しさでもあるよね〜〜〜
今回お話ししたように普段の自分の生活の中に隠れているヒントもたくさんあります。
普段の生活をしながら、もう一人の自分が自分を見ている、みたいな感覚を持って、
友達と話しながら「これくらいの仲の良さの友達と話している時はこういうトーンになるのか」
親と話しながら「親と話す時は雑だなぁ。目も見ないし、声もめっちゃ低いwww」
みたいな観察をたくさんしてみてください笑
色々な発見がありますよ〜〜
読んでくれてありがとうございました!
ではっ
「ここ、キャラクターの年齢2歳くらいらいあげてください」みたいな細かいディレクションがあることもあるんだよ!
先輩がたはやっぱりこういうのに一瞬で対応できるんだよね…!