声優の収録現場というのはとにかく時間との勝負のようなところがあります。
基本的に声優は仕事を時間帯いくら、という勘定ではなく一本いくら、という受け方をしているので、
3時間で終わる仕事でも5時間かかる仕事でもギャラの値段は同じです。
つまりどれだけ早く仕事を終わらせることができるのか、というところで戦っている感じなんですね。
収録現場には大先輩もたくさんいらっしゃることがあるわけですから
なるべくリテイクを少なくして早く仕事が終わるようにしたい。
新人の時はリテイクをたくさん重ねてしまうと、
後ろに先輩たちが座ってたくさん待っている状態の中芝居をしなくてはいけないので芝居ができない焦りと並行して
先輩たちのプレッシャーにも泣きそうになることがあります。笑
先日こんなご質問をいただきました。
なかなかにハードな質問ですが笑
イラッと、というよりやっぱり仕事をしていて一緒に働く人として、しんどいな、残念だな、と思うことは確かにあります。
起用していただく側でこんな話をするのもどうかと思いますが、ギリギリを答えてみたいと思います笑
時間を優先したのがわかる時
先ほどお話したように、収録の現場ではやっぱり時間がとてもシビアです。
というか、アニメを制作している現場はどの段階においても時間がない、というのが現状でしょう。
大量生産大量消費になってきてしまっているアニメ業界では、予算もどんどん削られている中でアニメ制作が行われているので
お金もなければ時間もない中で仕事をしなくてはいけません。
そうしているとやっぱり制作の現場でも「いい作品を作る」ということよりも「短時間で作る」ということを優先されることが多々あります。
でも物を作る人の中では、これって苦肉の策だと思うんですね。
本当はいいものを作りたい、自分の納得のいくものが作りたい、というのが本音だと思います。
ただ、どんな仕事だってそこでお金が発生するものはどうしても期限や納期がついてまわり
自分が納得できないものでもとりあえず仕上げる、ということが大切になってしまうことってよく割ることだと思うんですね。
でもそれがアニメの現場だと常態化してしまっているようなところがあります。
声優は何時間でいくら、というギャラではなくても
録音スタジオは何時間でいくら、という借り方をしているわけですから、時間内に仕事が終わらないとスタジオの延長料金も発生してしまうわけです。
だから5時間のものをなるべく3時間で終わらせようとみんな必死。
クライアントさん側にもそういう色が見える時が多々あります。
でもやっぱり作品の向上よりも時間を優先する、というのは最後の手段であって欲しいと思ってしまう。
監督さんによってはいろんな声優さんに「遅くなってごめんなさい」と言いながらもギリギリまで、場合によっては時間を超えても収録をされることがあります。
逆に収録が流れ作業になってしまっているような現場では、
5時間粘らなくてもまぁまぁ納得できるクオリティーで3時間の収録で終わらせてしまおう、という現場の雰囲気があることがあるんですね。
そういう現場はやっぱりしんどいです。
「あ、今投げたな」って思ってしまう時がどうしてもある。
商用で物を作っている以上仕方がないことですが、やっぱり物作りをしていく側としては辛いことです。
「使ってやっている」と思っている人
現状では声優業界は供給過多になりすぎているところがあり、
どうしても声優はクライアントさんから仕事をもらわないと声優として活動していくことはできません。
そこには上下関係ができやすく、
声優に対して「使ってやっている」という意識があるようなクライアントさんもいらっしゃいます。
でも冷静に考えてみて、声優が偉いのか監督が偉いのか、なんて作品を作る上では関係ないじゃないですか。
もちろんお仕事をいただけることに感謝する気持ちはあります。
でもディレクションをいただく時などのやりとりで無駄な上下関係を主張してくるような人がいると
しんどいな、と思うし、そういう現場でいい作品はできないだろうな、と思ってしまいます。
声優の技術も、スタッフの技術も、それぞれその人にしかできないものを持ち寄って仕事をしていて、
作品を作るのに上下関係なんて関係ない、と私は思っているんですね。
どれだけ作品を良くしていくことができるか、だと思っているので、
そういうディスカッションができなさそうな人と仕事をしなくてはいけない時は正直しんどいです。
声優の友達の間でも、そういう話って出ます。
「とんでもない扱われ方をした」と言っていた声優もいます。
→フリーランスになって見えてきた一緒に仕事をしたくない人の特徴
座組が大切
いい作品を作っていくのに大切なことはもちろんテクニカル的なものも必要ですが、
それぞれがそれぞれの立場で上下関係にとらわれず、その作品が良いものになるようにディスカッションし合えるような座組である、ということなのではないかなと思っています。
目的意識の違う人と仕事をするのはとても大変です。
でも多くの大人が「それが仕事をするということ」と言うんだと思います。
でもそれに迎合していると、自分が好きだったものが仕事になった時に嫌いなものに変わってしまう。
だからこそ、好きでい続けられるように、
好きな人と好きな仕事をしてちゃんと利益が生み出せるようにフリーランスで頑張っていきたいなと思っています。
フリーランスになってからの方が、こういうしんどい場面と出くわすことが少なくなりました。
本当に自分のことを好きでいてくれている人、仕事のあり方を信頼してくれている人しか声かけてくれなくなりますからね笑
読んでくれてありがとうございました。
では。