よく声優志望の方の悩みで
「演技が真面目すぎてつまらないと言われた」ということを聞きます。
そして「自分は真面目すぎるからつまらない人間なんだ」という風に落ち込んでしまう人も結構いるみたい。
演技が真面目すぎる、と言った方の意見もわかるし、
自分は真面目でつまらないんだ、と悩んでしまう人の気持ちもすごいわかる笑
なので今回は、声優は真面目な人の方がいいのか、不真面目な人の方がいいのか、ということについてお話してみたいと思います。
演技が真面目でつまらない、とは?
私の見解なので実際そういうディレクションをした人の意見がどうなのかはわかりませんが、
演技が真面目でつまらない、というのは多分「言った通りのことしかできないからつまらない」ということなのだと思います。
誰かのモノマネをする人がよくいるのですが、演技ってその人にしかできないものであって欲しいもので、モノマネだとオリジナルにはどうしても勝てないんですよね。
先駆者がいる場合、その先駆者を真似ても意味がない。
でも真面目な人はきっと「自分に何ができるか」ということを一生懸命考えて、
いろんな人の演技を研究してそれを真似しようとすると思うんです。
それは多分間違っていることではありません。
だれだって最初は真似から入るものだと思います。
でもそこに自分なりのエッセンスが必要というか、単純にモノマネするだけだと
そのモノマネしてる人より絶対何かが劣るでしょう。
オリジナルに比べるとコピーはどうしても出来損ないになります。
そうじゃなくて、いろんな人の真似をした上で自分なりの解釈や面白みを足していく必要があるんだと思います。
だから演技をする上では真面目ではいけないんだと思います。
真面目に真似をするだけでは相手に予想できる範囲のものしか提供することができなくなってしまいます。
それだと「まぁそんなもんだよね」となってしまう。
仲の良い舞台の演出家さんがよく言う言葉ですが、
「お客さんが支払ってくれている金額で予想してくれる範囲の舞台を飛び越えていかないとお客さんを満足させることはできない」という言葉に私はものすごく納得しました。
そう、相手を良い意味で裏切っていかないと、面白いとは思ってもらえないのです。
だからこそ、演技には不真面目さが求められるのだと思います。
いわゆる演技で「遊び」といわれる部分です。
自分なりのアドリブを追加したり、テンションの幅を広げてみたり、それは人それぞれなのですが
とにかく演技を「遊ぶ」ようにやること。
こうしなきゃいけない、というものは演技では無いし、逆にこうしてはいけない、というのもありません。
だからこそ、不真面目に、遊ぶことができる演技がお客さんの予想を超えてお客さんを楽しませることができるのだと思います。
仕事に対しては真面目が一番
演技に対しては不真面目な方がいい、という話をしましたが、仕事に対しては真面目な姿勢を持っている方がほとんどです。
お金をもらってお仕事をしているので当たり前のことなんですけどね笑
でも多分声優は人一倍「仕事をしっかりこなさないと」という意識が強いと思います。
なぜなら事務所に所属していたとしても声優は個人事業主だからです。
自分の評価が直接的に自分に返ってくる仕事。
何かミスをした時にその責任を被ってくれる会社はありません。
事務所は一緒に謝ってくれるかもしれないけれど、個人の信用は大きく失うことになります。
例えば、お腹が痛くて急に仕事を休んだら、会社だったら他の人が仕事をしてくれるかもしれないけれど
声優の場合は自分以外の人が自分の仕事を代理でやってくれる、なんてことはできません。
急に仕事を休んだら、その収録は別日になり、一人で収録をすることになるので、
その収録のためだけにまたスタジオを借りてもらって、製作陣がみんな集まらなくてはいけなくなってしまうのです。
そしてその日に失うのは自分個人の信頼です。
「あの人は仕事に穴をあける人だ。体調管理のできない人だ」と言われてしまう。
もう次は使ってもらえないかもしれない。
それが声優業界というものです。
最近は声優になりたい人もいますから、簡単にそうやって使われなくなってしまう。
代わりの人でいいや、と切られてしまう、そんな業界になってきてしまっています。
とてもしんどいですがそれが現状であり、
まだ名前が売れていない声優はそういう意識を強くもって仕事をしていかなくてはいけません。
だからこそ、仕事への向き合い方はやっぱり真面目じゃないとダメです。
→フリーランスになって見えてきた一緒に仕事をしたくない人の特徴
不真面目って魅力的
ただ、ベテランさんは特に性格的にも不真面目な人がたくさんいます笑
次の日収録なのに朝まで飲んでたりとか
収録のこと忘れてて家で寝てたーとか言う人もいます。
あまり大きな声では言えませんけどね笑
でもそういう人はすでに築き上げてきたポジションもあるし
何よりそれで許されてしまうキャラクター性だなぁと感じさせられることがよくあります。
そういう方のお芝居ってやっぱり面白いし唯一無二だと思う。
なかなか今から声優として活動していきたい、という人がこのポジションを目指すのは
声優という職業の扱い方も変わってきている今、難しいことですが、
適度な不真面目さというのは必要だと思います。
窮屈に感じることも多い業界ですから、不真面目な部分も自分に残しておかないと
仕事をしはじめてからメンタル的にきつくなってしまうと思うんです。
どちらにせよ、「演技が真面目」というのはマイナスな意味でしょう。
仕事に対する姿勢は真面目であるに越したことはないと思います笑
読んでくれてありがとうございました。
では。